唇を噛み締める。
そんなあたしの背中を、未来がとん…と、押した。
「ほら、春人クンがそう言ってるんだから、さっさと行きなー」
つんのめって、振り返る。
未来がにんまりとして、手を振った。
「あとで話は、ちゃーんと、聞き出しますから」
コノヤロウ。
噛み締めていた唇を解いて、少しだけ笑ってしまった。
もうホント、なんだろう。
コイツ等。
ありがとう。
泉が扉を開ける。
あたしは扉の向こうを見つめ、右足を踏み出した。
何を話そう。
限られた時間の中で、一体ノアと、何を話したらいいんだろう。
わからない。
いろんなことが口をついて出て行ってしまいそうだ。
だけど、会いたい。
ノアに会いたい。話したい。声を聴きたい。
機械みたいな冷たさでもいい、少しでも長く、触れていたい。
――あぁ、今頃。
方程式に、当てはまるんだから、あたしは。


