「……もうすぐ、ノアの機能は全停止する」
泉は静かに、言う。
「キミ等がいいヤツ過ぎた。ノアの感情は、制御システムも追いつかないくらい膨大になってる」
言って、泉はほほ笑む。
「特に、恋愛感情はヤバいね。いつからミヤコのこと好きだったんだってくらい、もう制御システム破壊しそうな勢いで」
「…………っ」
「もうホント、原因探して記憶データ整理してるこっちが笑っちゃうくらいに」
「…………っ」
「……どうする、ミヤコ」
あたしは顔を上げる。
泉は白衣のポケットに手を入れて、こちらを見ていた。
「制御システムは、さっき言った通りまだ追いつけてない。完全に機能停止するまで充電してれば、ノアはなんとか動ける」
「……それって」
「まだ話せる」
「…………」
「言いたいこと、あるだろ」
ある。
あるに決まっている。
もう、たっぷりと、これでもかってくらい、言いたいことなんて山ほど。
でもたぶんどれも、言い切る前にノアは動かなくなるだろう。
与えられる時間は、人生の内のほんの、ほんのひとかけらくらいだ。
あたしはうつむく。
あたしが会って、いいんだろうか。


