嗚呼、と。
あたしは自分の額に手を当てて項垂れた。
「……あった…あったよ……」
「……そうか」
一言うなずいて、泉はうなだれたあたしの頭を二度、軽く叩いた。
それから泉は春人へと顔を向ける。
「春人は、何か気になることあった?」
「……え、っと……やっぱり、充電が頻繁になって来たなって…思ってました……」
「そっか」
「あ、あと、感情がいろいろ、顔に出るようになってた気がします……」
「……そう」
泉は短く相槌を打つ。
そうして少し黙り込み、廊下は静けさが増す。
あたしは額から手を下ろし、数歩下がって壁に背を預けた。
「……ミヤコ」泉の声があたしを呼んだ。「ちょっと聞いていいか」
「なに…?」あたしは顔を上げる。泉はこちらを見ていた。
「ノア、最近、お前に対してどうだった?」
「どうって……」
「心配したり、助けたり、笑ったり、してなかった?」
――『心配してるんだ。』
『心配してるよ。』――
さっきまで、ノアと話していた光景が脳裏を過る。
ノアは笑ってくれていた。
あたしはそれがうれしかった。


