どれくらい経っただろう。
ずっと開かずの扉だった“手術室”の扉が開いた。
3人同時に顔を上げる。
扉の向こうから出てきたのは、泉だった。
「いずみ…」
あたしは椅子から立ち上がった。
泉はあたしを見下ろす。
その表情は至って、真剣だ。
「……ミヤコ、ノア最近、充電の調子悪くなかったか?」
「え……」
「思い当たる節はない?」
「え…っと……」
頭は依然、上手く状況を掴めないでいる。
思考の回転が遅い。
ノアが最近、何か、言ってなかったっけ。
何か。
――『そういえば、ノア大丈夫か。』
あ。
『なにが。』
『充電。手、冷たかったから。』
『あー……冬だから。』
『そうか。じゃあ充電しなくてオーケー?』
『うん。出てくる前、充電したから。』
あたしが風邪を引いたとき、うちに来たノアとの会話。
あのあとあたしは、ずっと額に冷たさを感じていた。
その冷たさが、機械の冷たさだったことを、あたしは、どうして、気に留めなかったんだろう。


