担架が“手術室”に入って行く。
春人はその手前で足止めされた。
あたしと未来は、その背中を見つめて立ち止まる。
扉が閉まった。
「……ノア…」
春人の震える声が、廊下に響いて消えた。
「……ただの充電切れじゃ、ないんだよね…」
未来が閉まった扉を見つめ、尋ねる。
あたしはうなずいた。
「……違うと思う。」
「外が、寒かったからとか…」
「…わかんない。」
答えると、未来は息を吐いてうなだれた。
何がどうして、ノアが倒れる理由に繋がったのか、あたし等にはわからない。
検討のしようがない。
アンドロイドの作りについて、あたし等は詳しくない。
「……考えても、しょうがないよね」
未来が顔を上げ、扉の前に立ちすくむ春人へと歩み寄った。
そして肩に手を置いて、「春人クン、今は落ち着いて、座っとこう」と声をかける。
春人は力なくうなずき、扉から離れた。
今は何もできないと、理解しているんだろうと思う。
あたしも何もできないから、2人と一緒に、近くに置いてある椅子に座った。
廊下はとても、静かだ。


