――ジャッ!
担架が廊下を走る。
白衣を着た人たちが口々に何かを喋っているけど聞きとれない。
辺りは慌ただしく動いている。
あたしは何が何だかわからないでいる。
「ノア!ノアッ!」
担架にくっついてそう呼んでいるのは春人の声だ。
泣きそうな声で名前を呼んでいる。
担架を追いかけるあたしの隣、未来は何もしゃべらない。
ただ不安そうな表情のまま走っていた。
『ノアが倒れた……』
あたしがそう、一番に電話したのは泉だった。
泉は仕事中で、けれど落ち着いた声で『充電切れじゃない?』と問うてきた。
あたしにはもう充電切れとかそういう次元じゃないことは理解できていた。
いつも充電が切れかけると死にそうな状態になるし、まずまともに喋れない。
電子音がうるさくなってくるし、息切れしてくるのが通常だからだ。
でも今回、それがなかった。
なんの前兆もなく、倒れたのだ。
それをあたしが伝えると、泉は黙った。
沈黙のあと、『……わかった、迎えに行く。今どこだ』と、打って変わって、真剣な口調で尋ねてきたから、あぁこれは、と思った。
あぁこれは、たぶんきっと、よくない。
そのあと、春人と未来に連絡して、病院にやってきた。
この病院に、こんな形でまたお世話になるなんて、思っても見なかった。