けれどあたしはそんなことどうでもいいと言うように、周りには目もくれずに春人を睨む。
実際どうでもいい。
他人の目とか気にする余裕があるほど、あたしには時間がないのだ。
ちょっと今自分カッコよくなかったですかいやなんでもない。
キツい視線を送りつけるあたしに、春人は後ろ頭を擦りながら、変わり映えしない無色な瞳を送り返す。
「…痛いんだけど」
「そりゃ叩きましたからね」
「……なに」
「なに、じゃねぇよお前がなんだよ」
「意味わかんないんだけど」
「こっちが意味わかんねぇよ」
「なんなの」
「昨日から何怒ってんだよ」
「…は?」
「あたし何したよ」
「…………。」
「教えてくんなきゃ謝りようがねぇでしょーが」
「…………。」
「何も言わなくても伝わるモンだとか思ってんなよ。あたしは超能力者じゃないよ」
「…………。」
「なんであんたが怒ってんのかって理由がわかんないまま避けられたら、さすがにあたしだって悲しいわ」


