イラッとした。
語尾に“☆”のないイラッである。
つまりは結構本気でイラッとしたわけである。
そういうわけだから口より先に手が出てしまった。
廊下にすぱこーんという実に素晴らしい効果音が響き渡った。
レアだぞ。
あたしがここまでイラッとするのは100年に一回の奇跡体験だぞ。希少価値だぞ。
いや100年もあたし生きないけど。
そこまで生きるつもりないけどっつーかそこまで生きる気力がねぇわ。
とにかく、あたしがなかなか本気でイラついたことは本当に極稀で、仮にも春人にここまでイラついたことなどない。
ヤツは天然記念物並みに天然だけど、だからこそ嫌味がない。怒る前に和むわ。
でも今回は違う。これは違う。
天然とかいう話じゃねぇだろ。
あからさまに、あたしに対して嫌味な態度取ってんだろ。
「…文句があんなら言えっつーのよ」
後頭部をぶっ叩かれて、あたしへと振り向いた春人。
意味わかんないくらい無表情。
隣に居た女の子は、驚いたように距離を取っていた。
女の子だけじゃない。
この廊下に居た、今の光景を見ていた生徒たちはほぼ全員後退していた。(※ただし未来以外に限る)


