グイッと髪の毛を引っ張られてあたしの視界が右斜め45度に傾いた。
あの先輩より現在隣に居るこの人の方がよっぽど怖い。
「はいはいなんでしょうか未来さん。」
「なんでしょうか、じゃねーわよ」
「じゃあなにでしょうか」
「誰も言い方変えろっつってねーわよ阿呆」
シュバッ!と脇腹を指で刺されました。
残像が見えた。地味に痛い。
コイツの攻撃力の高さは尋常じゃねぇ。
指が突き刺さった脇腹を擦るあたしに、しかしラスボス未来はそんなことなど華麗にスルー。
「あれっ、あれ見て!」
あたしをぶっ刺した指の内の一本、人差し指を伸ばし、前方を示す。
いまだに鈍い痛みが続く脇腹を擦りつつ、あたしはかったるげに顔を上げる。
事実かったるかった。
ラスボス未来さんに攻撃されてまで後輩観察などカッコ笑カッコ閉じるもいいとこである。
が、しかし。
未来に促されるままに上げた顔の先、あたしの視線が捉えたもの。
廊下でクラスメイト(と思わしき)女子と楽しげに話している、見慣れた華奢な後ろ姿。
春人だ。
惑うことなき春人の姿。
思わず履いてた上履きを脱いで春人の後頭部殴った。


