ノアは何も言わない。何一つ言わない。
あたしは空を見上げたまま続ける。
「…お父さんが言うから、みんなで行こうってさ。」
「…………。」
「あたし咄嗟に断っちゃって。」
「…………。」
「そしたら泉が、“じゃあミヤコはまた別の時ね”みたいなこと言って。」
「…………。」
「でも、わざわざいつ行くか言ってきたんだよあのバカ。」
「…………。」
「それが、今日でさ。」
「……で、迷ったんだ。」
「…………。うん。」
あたしは夕暮れから視線を逸らした。
鞄を見る。ぺちゃんこだ。
教室は至って静か。
もう誰の笑い声も、話し声も聞こえてこない。
みんな、楽しく遊んでいるだろうか。
あぁ、あたしも、行けばよかったのかな。
「なんで迷ったの。」
前振りもなく、問いが投げられた。
ノアの声は感情がよく読み取れないから、どういうつもりでその質問をしたのかわからない。
「なんで迷ったの」ノアはもう一度言う。「お墓参りは断ったんでしょ。」
なんでだろう、あたしは考える。


