できれば遊びに行きたかったけど。
どうしてあたしは今、迷ってしまったんだろう。
迷わなきゃいけない理由があっただろうか。
『行かないから』って、この間ハッキリ断言したのは自分の方ではないか。
じゃあどうして今頃になって、迷ってるんだ、あたしは。
帰ろうと席を立っていたのに、再び椅子に座ってしまった。
鞄の上にぼすんと倒れる。
特に何も入っていない鞄は、すぐに空気が抜けて潰れた。
夕暮れ時の教室にひとり。
遠くから笑い声が聞こえてくる。
テスト期間は部活がないから、今日は掛け声が聞こえない。
あたしは鞄に倒れ込んだまま、窓の方へと顔を向けた。
せっかくテストが終わって、晴れ晴れした気持ちになれるはずだったのに。
この間の食卓での出来事が、あたしの足をこれでもかというほどに引っ張った。
茜色に染まった空を、数羽の鳥が飛んでいく。
なんだかもう、どうでもいいや。
――ガラッ
教室のドアが開いた。
静かすぎるほどだった空間に突然の物音が響いて、あたしは鞄から顔を起こした。
ドアを開けた人物は、教室の中を見渡すこともせず、一直線にあたしを射抜いた。
冷めた瞳が、あたしを捉える。
「……ここに居たんだ。」
抑揚のない声で、ノアはあたしにそう言った。


