「…この間も言ったよね、俺。」
この間って、いつの話だ。
言ったよねって、なんの話だ。
あたしがそう思っていることをわかっているのは、ノアはその問いにアンサーを返す。
「あんたは自分のことがわかってない。」
インフルかかって寝込んでた時の話か。
たしかに、同じようなことを言われた気がする。
でも、じゃあ何がわかってないっていうんだ。
あたしはあたしなりに、自分がどれだけ情けないヤツかも、痛感したつもりだったんだけど。
けれどノアにとって、それはまだ、完璧な解答ではなかったようだ。
「……ミャーコはね」ノアは言う。「逃げてるんだよ。」
理解できなかった。
ノアは鞄を持って立ち上がる。
テーブルの横でいつの間にか膝をついていたあたしの、そのすぐそばを歩いて過ぎる。
そのままドアを開けて、「お邪魔しました」と礼儀を踏まえ、出て行った。
「……なんだそれ…。」あたしはひどく項垂れた。
お邪魔しました、じゃねーよ。
ちゃんとした答えを置いて行ってくんないかな。ホント。
ノアはいつもそうだ。
あたしがわからないことを知ってるクセに、明確な答えは絶対に教えてくれない。
自分で探せとでも言いたいのか。
探すも何も、何がどう逃げているのか、あたしにはそれすらわからないのに。


