「よし、1年生の教室に行ってみるか」
あたしが脳内で句読点ゼロの思考を巡らせているところに未来さんの突拍子のない言葉が飛び込んできて思考回路が全滅した。
立ち止まる。振り返る。指を立てる。一本。
「…もう一度お願いします。」
「言わせんな恥ずかしい」
「えーっとどの辺が。」
「だーかーらーねー?」
腕を組んで身を乗り出し、未来はあたしにもう一度言う。
「1年生の教室に行ってみようじゃありませんか」
「ハイ、リピートアフターミー!」とかなんとか立てた人差し指をくるくる回す未来は無視に限る。
“1年生の教室に行ってみようじゃありませんか”って2回言ってなんになる。
大事なのか大事なことなのか大事なことだから2回言うのか。
いやもうすでに2回言ったな。
あたしは階段の手すりを持って、頭を横に振る。
呆れたプラス行かないの意。
「行ってどうすんの」
「クラスで春人クンがどんな様子で過ごしているのか観察に」
もう十分観察したんじゃないんですか合格発表の日に双眼鏡で。なんでもないです。


