全員(といっても4人)が示し合わせたように、一斉にドアの方を振り向いた。
「……っとと~ノックもなしにごめんなさいね~」
ドアを開けて入ってきたのは、紛れもなく、“あたしの”お母さんだった。
未来の顔が分からない程度に引きつる。
ノアは特に変わったところもなく、視線を課題へと戻した。
春人に至っては何も知らないので、お母さんに向かって「いえ!」と元気よく声を上げた。
「ハーイこれ、勉強頑張ってるみんなに差し入れよ~」
お母さんは持っていたお盆をテーブルの隅に置くと、ジュースの入ったコップとお菓子の入った籠をあたし等の前に並べた。
うちのお母さんはサービス精神旺盛なので、あたしが高2になった今でもこうして差し入れを持ってくるわけだ。
他の家庭の事情をよく知らないから一丸には言えないけど、少なくとも、高校生になった娘が友達を家に連れてきたら、親って言うのは結構知らんぷりしている方なんじゃないかと。
偏見かもしれないが。
「あ、ありがとうございます~!」
未来は目の前に置かれたコップから視線をずらし、お母さんを見上げてお礼を言った。
それにつられるようにして、桜井双子(と言った方が簡単に思えたのでそうする)も「ありがとうございます」と続いた。
あ、言い忘れていたけども、ノアのことはすでにお母さんはご存じなのである。
病院で目を覚ましたお母さんに、ノアが自分から告げてしまった。
そしたらお母さんは『やっぱりそうだったの!同じ匂いがするわ~って思ってたのよね~!』とか言いながら笑っていた。同じ匂いってなんだ。
しかしあたしは今、重大な事柄を見逃していた。
すっかりさっぱり忘れていた。
それに気が付いたのは、はたと動作を停止した、春人を目の当たりにしたからである。


