「……ミヤコ、母さんはどんな人だったか、覚えてる?」
突然、泉からそんな質問が飛んできて、あたしは“なんで”と繰り返していた口を閉じた。
お母さんが、どんな人だったか。
覚えているも何も、ついさっきまで、あたしは、笑いながら……話していたのに。
「……覚えてる。」
「言ってみ。どんな人だった?」
泉はやわらかな声で尋ねた。
あたしは今まで、お母さんと過ごしてきた時間をさかのぼる。
生まれた頃のことなんて当然覚えていないけれど、小さい頃の記憶は、まだまだ鮮明に思い出せた。
「……よく、笑う人で」
「…うん」
「面白い冗談を言って、自分で笑い転げたりして」
「…そうだなー」泉は少し笑う。
「泉とあたしが乱闘してると、怒って外に追い出したり」
「あったあった」
「怒ると怖いけど、優しいし、ごはん美味しいし」
「あー、美味いね」
「失敗してもすぐ立ち直る底抜けの前向きで」
「あれは異常だよなー」また笑う。
「あと、あたしの背が伸びると、呆れたりするけどよろこんでくれるし」
「うん」
「あ、あと笑い方がお前に似てる」あたしは少しだけ笑った。
「マジ?」泉は苦笑した。
「それと、なんかあたしと、恋バナしたいとか言って」
「へえー」
「すごい親バカでさ」
「……うん」
「泉のことも、あたしのことも……――」
「…………」
「――……本当に、大好きなお母さんでさ…」
涙は、こらえた。


