何も考えて居たくないのに、そういうところだけはきちんと情報整理しようと思考回路が働く。
働かないでくれ、わからないままでいたい。
それなのに、あたしの脳内はフル活動で情報を整理して行ってしまう。
こういう時だけ仕事が速い、あたしの脳みそはクソったれだ。
「……順を追って話そうか」泉は俯き加減で、首を右に少し傾けた。
視線はずっと、自分の手元を見ている。
いつもの泉では、考えられないような姿だった。
「…もうわかってるだろうけど、一応言っとくと、俺はアンドロイドの研究をしてる」
「……うん。」
「大学時代から研究してて、就職は大学に近い研究所だったけど」
「……こっちに戻って来たね。」
「ミヤコは戻ってきてほしくなかったみたいだけどな」
「……否定はしない。」
「でも、残念ながら、戻って来なきゃならなかったんだよ」
泉は何かを思い出すように目を閉じた。
何を思い出そうとしてるのか。
たぶんそれは、あたしの知らない“思い出”だ。
「……1月だったかな」あいまいに日付を言いながら、泉は瞼を持ち上げた。
視線があたしを捉える。
きっと思い出したくなかったのだろうその日を、泉の瞳が語っていた。
「……母さんに、ガンが見つかったんだ」
それはやっぱり、あたしの知らない、思い出だった。


