辿り着いたのは研究室のような場所だった。
ドアの横に『朝倉』と書かれたプレートが取り付けられている。
泉専用の部屋らしい。
その部屋主がドアノブを回してドアを開けると、いつから待っていたのか、部屋の中にはノアが居た。
客人用のソファに座って、何かを読みふけっている。
しかし泉が入ってきたことを認めると、読んでいた何かを閉じて、積み上げられている本の下に置いた。
「……おーいノアー?今何読んでたー?」
「さあね。」
「人の部屋勝手に漁るなよー」
「漁ってない。そこにあったから読んでただけ。」
ああいえばこういう。
いつものノアの調子だ。
そういえばこの2人はいつから知り合いだったんだろう。
わからない。
あたしには今、わからないことが多すぎる。
泉に促されてノアの隣に腰を下ろす。
すると、まるで反動でも起きたかのようなタイミングで、ノアが立ち上がった。
「……どこ行くの」あたしは思わず声をかけた。
「大事な話するんでしょ。俺は外に出とく。」当然のように答えたノアは、そのままさっさと開けっ放しのドアから外に出て行ってしまった。
バタン、と閉まったドアを見つめ、あたしは急に心細くなっていく自分が心底情けないと心の中で自嘲した。
「……そこは居てやれよアイツさー」泉が呆れたようにそう言ったけど、すでに居ないノアに聞こえるはずもなく。


