「……教えて欲しいことが」あたしは言う。
「……うん」泉が相槌を打った。
「……教えて欲しいことが、いろいろ、あるんだけど…」
「うん」
「……あたしにも…教えてくれる……?」
聞きたいことは山ほどある。
どれから聞いていいのかわからないほどに。
「教える」泉は迷いのない声で答えた。「全部、教えるから」
――ジャッ!
病院から担架がやってきた。
泉が顔を上げる。
「泉!持って来たで!」
弥生さんの声が響く。
弥生さんの“持って来た”というそれは担架のことではなかったようで、駆け寄ってきた弥生さんは何かを泉に手渡した。
「せんきゅー。たまには役に立つよねー弥生ってさー」
普段通りの口調で小ばかにする泉に、弥生さんは軽い蹴りを入れた。
「たまにってなんやねんたまにって」
「ハイハイいつもご苦労様です弥生さんー」
「やかましいわ!っちゅーか、あんた居らんと指示出す人居らへんからな!はよ来てや!」
弥生さんはそう言い捨てて背を向けた。
泉はその背中を見送ると、手渡されたそれを慣れた手つきで広げた。
バサッ!と布の擦れる音が鼓膜を揺らす。泉はそれに腕を通した。
「……ミヤコ」泉があたしの名前を呼ぶ。あたしは唖然と泉を見上げた。
「――全部教えるのは、充電終わってからにしようか」
あたしの頭を軽く撫で、そのまま背を向けた泉は、見慣れない白衣姿だった。


