充電終わったらキスしよう





部屋着姿で廊下に突っ立っているあたしの姿は、ハタから見ればさもおかしなオブジェに見えたことだろう。

しかし振り向いた泉は、そんなあたしをバカにしたような笑みではなく、むしろ。



「……お前さー、風邪治ってないんだからー、上着くらい羽織ってきたらどうー?」


呆れた、というような、見慣れた笑みを浮かべていた。

それだけでホッとした。

バカみたいだけど、ホッとした。


白状しよう。

情けないけれど、あたしは今、とてつもなく怖かったのだ。



「……うるさい。クソ兄貴…」


今のあたしに出来うる限りの悪態をつき、逃げるように2階の自室へ飛び込んだ。

それから床に放っておいたいつぞやかのパーカーをひったくると、袖を通しながら階段を駆け下りた。




*****




車が停まった場所は、見覚えのある病院だった。

弥生さんが倒れた時、あたしが走り回って探した、あの病院の、裏だった。

泉が車のエンジンを切ってドアを開けると、待ち構えていたように誰かが泉に駆け寄った。


「アンタいきなり仕事放って消えるとか何考えてんの!」

「うわー…母親倒れて焦ってた俺にそんなこと言っちゃうんだー」

「……え?」

「今連れてきた。手が空いてるヤツ呼んで、あと担架忘れんな」


聞き覚えのあるイントネーションと、声だ。

あたしは助手席でぼうっとしていたけれど、その声に顔を上げて、運転席の外へと視線をよこした。