……どれくらい経っただろう。
何を見ていたかもわからない、息をしていたのかもわからないまま、ただぼうっとしていたあたしは、玄関から聞こえてきた物音にゆらりと顔を上げた。
誰かの足音が近づいてくる。
誰だろう。
聞き覚えのある足音のような、気がする……。
――バンッ!
リビングのドアが勢いよく開いた。
そのままの足でキッチンへとやってきたその人物を見上げて、あたしは瞬きひとつせずに。
「……いずみ…」
あたしを見下ろす、兄の名前を口にした。
泉は荒い息を吐きながら、傍にあった冷蔵庫に手をついた。
その手に額を押し付けるようにしてうつむいた泉は、掠れた声で小さく。
「……だから、あんなにムリすんなっつったのに……ッ!」
ダンッ!と、冷蔵庫を叩いて、言った。
何をどう、無理するなと、誰に、言ったんだろう。
思考回路はめちゃくちゃだ。
そんなあたしの後ろで流しに寄り掛かっていたノアは、背を離して泉に歩み寄った。
「……早くした方がいいよ。」
「……わかってる…連絡ありがとな」
泉は冷蔵庫から手を離し、髪の毛を掻き上げながらあたしの方へと足を向けた。
あたしは泉を見上げる。泉はあたしのすぐ傍に膝をついてしゃがんだ。


