気づかなかった。
全然、これっぽっちも、気づかなかった。
あたしは倒れているお母さんを見つめた。
見つめながら、しゃがみこんだ。
目を閉じて横たわるお母さんは、とてもアンドロイドになんか見えない。
気づかなくて当然かもしれない。
嗚呼…気づくも何も、もしかしたら、本当のお母さんなんて居なかったのかもしれない。
あたしにお母さんなんて居なかったのかもしれない。
家族なんて居なかったのかもしれない。
もう誰を信じていいかわからない。
みんな、自分以外みんな、アンドロイドなんじゃないかとさえ、思ってしまう。
あたし自身も、人間ではないんじゃないかと、そんなことさえ……――
「――……ミャーコ」
不意に。
項垂れるあたしの左手をノアが握った。
あたたかい。
ほっとするようなぬくもり。
“人”の、ぬくもりだった。
「……大丈夫。」
その声に顔を上げる。
ゆっくりと顔を上げた先に居た、ノアの瞳にあたしが映った。
「……ミャーコは風邪、引くんだよ。」
その一言が、魔法の呪文のようだった。


