上着も羽織らずドアを開けた。
音はやんでいる。
さっきの大きな電子音は、完全に充電が切れた時のものだった。
今うちにノアは居ない。もちろん弥生さんも。夏に出会ったあの人ももう居ない。
じゃあ。じゃあ誰だって言うんだ。
――『今日はお父さんもお兄ちゃんも居ないんだから』
さっきお母さんが言っていた言葉が脳裏を過った。
途端に嫌な予感が背筋を駆け巡る。
そんな。
まさか。
いや。
ありえない。
だって。
そんな。
うそ。
ありえない。
ありえない。
無我夢中で階段を駆け下り、リビングへと転がり込んだ。
「お母さん!?」
大声で呼んだ。返事は聞こえない。
姿も見えない。
「お母さん!」
もう一度呼んで、ふとキッチンへと視線を向けた。


