あたしはあまりにも寝相が悪すぎて、風邪引いてるくせに何回もベッドから転落するという大失態をしてしまったようだ。
その都度父上やらお兄様やらが抱え上げてくれていたらしい。
父上なら大感謝するのだがしかしあのクソ兄貴に手を借りるなど……ちくしょうめ。
っていうか風邪引いてる間まったく会ってないと思ってたけど実は会ってたんだな知らなかった。むしろ知らないほうがよかった。
お母さんはおかゆの乗ったおぼんを手に取り、こちらに背を向ける。
そのままドアを開けて、振り返った。
「……早く風邪、治してね」
なんでわざわざ、言うのかしら。
「まかせろ。」
あたしがそう答えると、お母さんはまたうふふと笑って「じゃあ、おやすみ」とドアを閉めた。
あたしは閉まったドアを見つめ、息をつく。
お母さんの足音が遠ざかって行くのを聴きながら、言われた通りに薬を飲んだ。
私的にはもう治っていると言っても過言ではないくらい楽なんだけど、熱がもうちょいあるから油断はできない。
その辺は我が後輩のぶり返しっぷりで学習済みだ。
何気に役立つ看病の知恵。ありがたいね。
そんなわけで寝よう。
盛大にあくびをしてから、あたしはゆっくりと布団に潜り込んだ。
久しぶりにご飯を食べたので、いい感じにあったまってより良い睡眠がとれそうである。
目を閉じて深呼吸をしたら、あっという間に眠気がやってきた。
そのままじんわりと意識が遠ざかって、次第に現実と夢の狭間を行き来するようになった時。
――ピーッ、ピーッ
遠くで、電子音が聞こえた。


