とにかく、そう。
それくらいアナタとあたしは顔見知りなのよおわかりかしら。
そう思いつつも、春人(仮/もう仮と言うしかない)が首をかしげて“どうなの”って感じの視線を向けてくるので、
「…そ、そうだけど」
って、うなずくしかない。
すると春人(仮)は、肩にかけている鞄とは別に、手に持っていた紙袋を持ち上げて、こちらに差し出してきた。
あたしはごく自然にそれを受け取り、中は見ないで春人(仮)を見た。
また目が合った。
「……これ、なに?」
「上着」
「は?」
「この間、あんたが貸してくれた上着」
だから“あんた”って言うなよ違和感ありすぎてどうしていいかわかんねぇよ。
いいけどね別に春人(仮)だし。
カッコ仮カッコ閉じるだからね、別にいいし。
脳内でムリヤリ納得させつつ、あたしは渡された紙袋を覗き込む。
たしかに、それはあたしが以前、春人に貸した上着だった。
綺麗に畳まれて、紙袋にきちんと収まっている。
こんなことを言うと春人が拗ねそうだから言わないんだけどヤツは服を畳むだとか勉強だとか家事だとか、とにかくそういう“器用”なことが苦手である。
つまりだ、あたしが今言いたいのは。
お前、服、畳めるようになったのか……!