いつもの春人なら「予防接種してきたので大丈夫です!」って言うだろう。
いや、お母さんが勝手に省略しただけかもしれない。
いやでも…もしかしてもしかするかもしれないので。
「……ふむ。じゃあちょっとだけ上がってもらって。」
「そう?じゃ、呼んでくるわねー」
お母さんはそう言って踵を返す。
部屋のドアも半開きのまま、階段を下りながら「春人くん上がって来ていいわよー」と玄関へ声をかけている。
そのままお母さんの足音は遠ざかって行ったけど、代わりに違う足音が階段を上ってきた。
階段を登り終えた足音はあたしの部屋の前で止まり、それから半開きのドアが開いた。
視界に映ったその一瞬でわかる。
「……やっぱお前か。」
あたしが布団の中から言うと、ヤツは後ろ手にドアを閉めながらこちらを見た。
相も変わらず、冷たい目である。
「……なに、俺じゃ悪いの。」
「いや別にそういうことじゃなくて、うちの母が“春人くん来たわよ”って言うから。」
「……あぁ、なるほどね。」
あたしのテキトーな説明で春人、ではなく、ノアは合点したようだ。
さすがアンドロイドは違うぜ。
っていうかノアってば超久しぶりの出番じゃね?
夏の最初辺りからほとんど出てなかったよねこの人。
うわー超久しぶりーノアさんチーッス。


