ってやっぱりあたし一人で喋ってるよねいい加減寂しいんだけどちょっと春人なんか喋れよマジで「うん」とか「すん」とか「わん」とかあるでしょごめん最後のは忘れてくれ。
…ほら。
ほら、ほら。
どこまであたしを一人で喋らせる気だコノヤロウ。
見ろ、周りのみんなが注目してるじゃないか。
桜の木の下で向かい合って立ってるからみんながヒソヒソ言ってるじゃないか。
こっち見つつヒソヒソ言いつつ通り過ぎて行ってるじゃないかって通り過ぎるのかよお前等スルーするなら完全スルーしてくれ頼むから。
春人も春人で何か言うとか怒ってるならあたしを無視して去って行くとかなんかできるでしょーが。
去って行かれるとキョウちゃん先輩ちょっと傷つくけどね。
怒ってるなら面と向かって怒られた方がいいです。
だからほらなんか言おうよ春人クンほら。
というあたしの願いが届いたのか、まあそんなことないと言い切れるけれど、でも絶妙なタイミングで。
「……あんた」
そう、目の前の桜井春人が言った。
あたしのことを“キョウちゃん先輩”だとか“せんぱい”だとか、そんな呼び方じゃなくて、“あんた”って言った。
“あんた”って言った。
大事なことなので2回言いました。


