特に何をするわけでもなく。
何か考えさせられたわけでもなく。
「単にスーさんが、スーさんだったから。それだけじゃないかと思います。あたしはね。」
簡単な理由だ。でも他の人じゃできなかったことだ。
いつもみんなからいじられてるけど、ホントはみんな、スーさんのことを尊敬していて、そんでたぶん、大好きだ。
それを上手く伝えられないから、ちょっかい出したりするんだよ。
うちのクラスはみんな、不器用なツンデレばっかだ。
あたしもか。
「……鈴木さんは、とても幸せな方ですね」
藍さんはうれしそうに笑う。
そんなアナタは、そんな幸せなスーさんに好かれているから、二乗されて倍の幸せ者なんだと思いますよ。
気づいてないかもしれないですけどね。
「わたし」藍さんは言う。
「わたし、とても楽しかったです」
彼女の言葉は、過去形だった。
「楽しか…った?」
「はい」藍さんが微笑む。
「え、過去形なんですか。」あたしは尋ねる。
「そのご様子ですと、ご存じない、のかもしれませんね」
藍さんは少し、困ったような笑みだった。
「え、なに、なんの話です…?」
じわり、嫌な予感が体の奥から這い上がってくる。


