自分が落ち込んでいるとき、弱っているとき、誰かが傍に居るだけで少し楽になったりする。
いつも通り接してくれたり、ちょっと笑わせてくれたり、それだけで救われることだってあるのだ。
あたしが梅雨、雨の中を迎えに来てくれたノアに、玄関で怒ってくれた春人に、ちょっと、救われたように。
藍さんはスーさんに、救われた。
たぶん、なんの複雑な理由でもなく、それだけの話だ。
それだけの話が、藍さんにとって、何より大事なものだったのだ。
「……うちのクラスが明るくなった理由、たぶんこれだわ。」
あたしは頬杖をやめ、噴水の縁に両手をついて空を仰ぐ。
藍さんはあたしの隣で不思議そうな表情を浮かべた。
「…京ちゃんのクラスが明るくなった理由、ですか…?」
「ですです。」
ずっと考えていた。
入学当初、あたしのクラスは死んだように暗かった。
誰もかれもが遠慮して、ビクビクして過ごしているようなクラスだった。
それがどうして、今みたいな、バカで楽しいクラスになったのか。
「担任が、スーさんだったから、かと。」
「鈴木さんが……」
「うちのクラス、最初すごい暗くって。誰も楽しくないみたいな顔してたんですよ。それが今じゃ、みんな楽しくてしょうがないみたいで、学校来てるんです。」
「そうなのですか!」
「もし担任が、スーさんじゃなかったら、こうはならなかったかもですねー。」
「……鈴木さんは、何をなさったのですか?」
藍さんが興味深そうに尋ねる。
あたしは少し考えてから、「まあ」と。
「まあ、うちのクラスが藍さんだと考えてもらえれば、一番かと。」


