「…わたしの作られた理由、なのですが」
藍さんは少し、申し訳ないというか、そんな顔で理由を口にした。
「赤ちゃんのできないご夫婦の間にできた、娘。ということで、作られたのです」
彼女の作られた理由は、あたしが知る限りでは一番、幸福を意味するものだった。
「長谷川さんご夫婦の間に、どうしても赤ちゃんができなかったそうなんです。それで、わたしが作られたようで」
「……あれでも、藍さん21歳ですよね?」
「はい。なにぶん長谷川さんご夫婦が、もう若くないのでして……」
「そうなんですか。」
「どうしてもお子さんが欲しかったようです。そこでわたしが作られて、長谷川藍として、今まで生活させていただきました」
「ってことは、藍さんはいきなり20代の設定で子供になったと。」
藍さんはうなずく。
なるほど、だからか。
だからこの前、あたしが「大学生ですか」って聞いたとき、答えなかったわけだ。
大学生でもなければ、高校にも通ったことがない、そもそもこの世界にいきなり20代で放り込まれたわけだから。
「あ、一応常識の知識なんかはあるんです!ですから、ここが公園ですとか、今何時何分何秒ですとか、そういうことは、きちんと理解できるのです!」
「ふむ。」知ってたけども。
「けれど、それだけではこの世の中のことがすべて理解できないと思いまして、それで、読書を……」
健気だ……。


