充電終わったらキスしよう






公園の時計が、午後7時を指し示す。

8月も中旬あたりになると、少しずつ日が短くなる。

辺りはすでに、深い群青色に包まれていた。

足元を歩いていた鳩は、もう居ない。


「……いつも、何時くらいまでここでそうやってるんですか。」


あたしは自分の鞄から取り出した課題をやりながら、隣に座る藍さんに問う。

藍さんは開いていた文庫本から顔を上げ、公園の時計へと視線を投げた。


「ええと……さすがに夜中には帰りますけれど、充電があまりもたないので、朝になるとここへ来ます」

「じゃあいつも、この時間にはまだ居るんですか?」

「はい。ご迷惑だとは思っているのですが……」


ご迷惑どころか大変危険だと思うのですが。


「……わたしは、使えないアンドロイドですね」


藍さんはそう言って、眉を下げて笑う。

静かに文庫本を閉じたあと、ゆっくりと空を見上げた。


「……アンドロイドって、必ず作られる理由があるじゃないですか」

「そうみたいですね。」

「わたしが作られた理由、だとかを少し、お話してもよろしいでしょうか」


もちろん、とあたしはうなずく。

藍さんは「ありがとうございます」と微笑む。


ノアも弥生さんも、藍さんも、人間だよなあと、表情を見てつくづく思う。