あたしの数メートル先。
膝から崩れ落ちる藍さん。
がつんっと、脳内に衝撃が走るようだった。
なんだ、なんだ。
どこかであたしは、似たような経験をしたことがあるんじゃないか?
倒れるところは見てない、でもこんな風に、倒れる人をどこかで……――
「――……藍さんっ」
あたしは迷いなく藍さんに駆け寄った。
通行人がなんだなんだとこちらに好奇の視線を向ける。
けれどあたしはそんなもん気にも留めず、倒れた藍さんの傍に膝をついた。
首の下に手を差し入れて抱き起す。
藍さんの息は荒い。
発熱しているようだ。
なのに抱き起した体は恐ろしいほどに冷たく――……。
あぁ、なるほど、そういうことか。
周りは騒然としている。
誰かが「救急車呼んで!」と叫んでいる。
あたしはそれは止めた。
「大丈夫です、軽い貧血みたいなので。」
もっともらしい理由をつけて、あたしは119番を拒否した。


