充電終わったらキスしよう






それから追い出されるようにして学校を出たあたしは、夕暮れの家路についた。

街を歩く人々をなんとなく眺める。

群れを成して歩く中学生。きゃっきゃとはしゃぎながら歩いて行く女子高生。

夏だから暑いんじゃないかと思ってしまうくらいにはくっついて歩くカップルとか。もうちょっとで手を繋ぐんじゃないかという微妙な距離の高校生男女二人組とか。


『長谷川さんがどんな本読んでるか、ちょっと知りたかったんだよ』


さっきスーさんが言っていた言葉が脳内で反芻される。

あの中学生たちも、女子高生たちも、暑苦しいカップルも、微妙な距離の高校生も、みんな同じように思うことがあるんだろうか。

たぶんこの疑問を、未来さんに伝えたらまた呆れられるはずだ。

そしてたぶん、「でもわかるなー」とか言う。

「だって好きな人のことってさ、知りたくなんない?」って言うと思う。

でもたぶんあたしは、「いや別に。」と答えるのだ。


好きな人のことが知りたいとか、同じ世界を見てみたいとか、同じ趣味を持ってみたいとか、そういうこと。

あたしにはわからないし、興味ない次元の話だ。




「…………あ」


夕暮れ時の街中で、見覚えのある後ろ姿を発見した。

それはちょうど、例の大きな公園の近くで、見かけたその姿は藍さんだった。

ここで今日のスーさんのことを話すのはお節介が過ぎるかと思いつつ、でもなんとなく話しかけてみようかと思って方向転換。

前を歩く藍さんは間違いなく公園へと向かっていて、その足取りはゆるやかで、ちょっと危うい。


……え、危うい?




――がくんっ。