「全部読まないんですか？」
「今日はもう疲れた」
そりゃあんだけ読んでたら疲れる。（補習終わるまでずっと本開いてた）
「活字読むのあんま慣れてないんよなあ…」
「…………。えガチでひらがなの本しか、」
「ちげーよ。そうじゃねーよ」
「じゃホントは読書苦手なんですか。」
問いかける。
スーさんは何も言わずに文庫本を見下ろした。
苦手なんだなとすぐにわかった。
聞かなくてもわかってたけど、やっぱりかと。
そもそもスーさんが本読んでるところなど見たことがない。
それは今日のみんなの反応でおわかりいただけただろうと思う。
じゃあなんで読むんだろうか。
苦手なら苦手だって言えばよかったのに。
というあたしの意思が伝わったのか、まさかそんなことはないだろうけど、
「……長谷川さんがどんな本読んでるか、ちょっと知りたかったんだよ」
文庫本を見下ろして、小さな声でスーさんはそう言った。
そうかと思えば椅子から立ち上がり、伸びをし始める。
背骨がバキッと鳴ったのがあたしにも聞こえた。
……歳、ですね。
「……スーさん、いい整骨院紹介しましょうか。」
「結構だよ!!」
