するとスーさんはハッとしたように顔を上げ、イヤホンを片耳だけ外しながらこちらを向いた。
「なんだよ」
「読書中に大変申し訳ないんですけど質問いいですか。」
「またかよ……」
「この間言ってた雑貨屋、行きました?」
「……まあ、行ったけど」
「指輪買えました?」
あたしがそう率直に尋ねると、スーさんは押し黙った。
何故そこで黙るんだと。
しばらく黙ってから、特にズレてもないだろう眼鏡を押し上げながら視線を明後日に投げた。
「……買えた」
「おー。おめでとうございました。」
「何故そこで余計な過去形にする……?」
「っていうかサイズ。」
「あ?」
「指輪ってサイズあるくないっすか?」
「あー……長谷川さんが自分ではめてみよったサイズにした……ってなんで俺は朝倉にここまで詳しく説明を……」
「あたしくらいしか聞いてくれる人が居ないからじゃないんですか。」
「やけん俺はどんだけぼっちなんだっつーの!!」
「すんませんついうっかり。」
「お前のうっかりは心底怖ぇーよ」
本気で嫌だという表情を浮かべながら、スーさんはイヤホンを両方とも外した。
それから本を閉じて息をつく。


