で結局ハンカチはスーさんの手に渡らないまま放置。
スーさんも今のみんなの会話で涙も引っ込んだのか、呆れ顔で「お前等がとってもヤサシイヤツ等だということはよくわかった。座れ。」とみんなを手で追い払っている。
未来さんはそんな様子を見ながらケラケラと笑った。
「うちのクラスってさあ、特進なのにバカばっかだよねー」
「そうだね、お前とかね。」
「アンタもね」
「否定はしない。」
「でも最初とかさ、うちのクラス最悪じゃなかったっけ?」
「あたしは特に考えたことなかったけど、静かだなとは思ってた。」
「だよね。今じゃこれだからねー」
未来さんは椅子に横向きで座り、ぐーっと伸びをする。
それから天井を仰ぎ見るようにして、深呼吸の中に言葉を混じらせた。
「あたしやっぱ、このクラス好きだわー」
*****
夕暮れに染まる教室で、あたしは窓辺に座って音楽を聴いていた。
今日は丸付けとか片付けとかしないらしい。
何故なら今、スーさんもスーさんで、音楽を聴きながら本を読んでいたりするからだ。
さっき言わなかったけど、その本というのは、藍さんが渡したがっていた例の本だ。
だからたぶん、スーさんが今聴いている曲は、藍さんが絶賛していたあの曲に違いない。
あたしはプレイリストの曲を聴き終ると、ヘッドホンを外して教卓へと目を向けた。
話しかけるのは悪いかなと思いつつも、「あの。」と話しかけてみる。


