思わず足を止めて、ヘッドホンを外す。
外したヘッドホンを首にかけつつ、ゆっくりと振り返る。
見てはいけないような、でも見なくてはいけないような。
いやいや、見間違いだろ。
そうとしか思えない、否、思ってはいけない。
だって、ねぇ?
まさか、ねぇ?
あの桜の木の下に春人らしき人物が居たように見えたとか自分マジ眼科行った方がいいんじゃねぇのっていう。
けれど振り返って確認してしまうところ、あたしはどうにも幻覚だとは思えなかったらしい。
そして見た、桜の木の下。
薄い色をした、透き通るような瞳とぶつかった。
肌の色は白、色素の薄いさらさらの髪の毛、華奢な体型、その立ち姿。
どこからどう見ても間違いない。
昨日高熱を出して早々に帰らされてしまった我が後輩。
桜井春人、その人である。
……バカな。
38度越えの熱を出しても学校に来るとかお前どんだけ新学期大好きなんだ。


