充電終わったらキスしよう





スーさんはズレた黒縁眼鏡をかけ直しながら、引きつり笑いを浮かべる。

スーツに黒縁眼鏡と言うそこそこイケてる外見なのにホント残念な人だなとつくづく思う今日この頃。


「え、えーっと…それは、そういや聞いたことなかったな…」

「そうっすか。」

「っちゆーか、お前もしかしてそういうの聞きたいがために最近放課後まで残っちょんのか!?」

「否定はしない。」

「帰れ!!一刻も早く!!」


バチンッ。

ホッチキスの留める音を響かせて、あたしはプリントの束を重ねる。


「丸付けおよびプリントまとめ、終わりましたけども。」

「…………。や、やっぱ帰らんでいいわ…お前仕事早いし……」

「そろそろ給料もらえるとうれしいんですけどね。」

「誰がやるか!!」


あたしはプリントの束を整えると、椅子から立ち上がって窓辺に向かう。

眼下には夕暮れに染まる街が見えた。

どこかでひぐらしが鳴いている。


気になるのだ、なんとなく。

藍さんがどうしていつも、あの噴水のところに居るのか。

大学生ですか、と尋ねたあたしに、藍さんは何も答えなかった。

働いているわけでもないだろうし、それ以前に働いていたら昼間からあの公園に行けるはずもない。

なんだろうか、何が引っ掛かってるんだろうか。