という思いを込めた哀れみの瞳をスーさんに向けたら、すかさずスーさんに「こっち見んなし!!」と言われました。
見たくて見たんじゃありません。アナタがとてもじゃないけど哀れだったものですからつい。
長谷川さんは持っていたバッグの口を開けると、中身をがさごそと漁り始めた。
それから目的のものを探り当てたのか、笑顔を浮かべて何かを取り出した。
「はい、これです!」
「え、あー……」
「とても素敵でした!」
長谷川さんが持っていたのは、一枚のCDだった。
少し古いCDだ。
あたしの知らないアーティストのCDだ。まあそれが古かろうが古くなかろうが、あたしはそれほど音楽を知っているわけじゃないので結果的に知らなかっただろうけど。
スーさんは差し出されたCDをゆっくりと受け取る。
長谷川さんは受け渡しが完了したか否かのところで、もう耐えられないという風に目を輝かせて喋りだす。
「わたしロックなんて聴いたことがなかったので、すごく新鮮でした!落ち着いた曲もあって、それが今読んでいる本にとても合っていたので、ずっと聴いていました!」
「あ、そう、そうですか…!」
「はい!おかげでその本、すっかり読んでしまいまして、あとはもう曲を聴きながら泣いてしまいました!」
「その曲、たぶん8番の曲、ですよね…」
「そうです、それなのです!」
「俺もあの曲好きなんすよ!このバンド今もう活動してなくて、ああいう曲調の曲が少ないからなおさら!」
「そうなのですかぁ…。でしたらもう、そのCDは宝物ですね!」
「そうなりますね!」
「あ、よろしかったら、本読みませんか?わたし今ちょうど持ってるんです!」
「え、あ、じゃあ…」
スーさんが言いかけた直後、遠くからお呼びの声がかかった。


