そうして高校2年になって、16歳になったあたしはそろそろ、身長が160センチになりそうだ。

時間は流れて時代は動く。

人は当たり前のように成長して、変わって行く。


つまりはそういうことなのだ。


我が家のクソ兄貴である泉が、6年の間に成長しているのは当たり前のことで。

あたしより家事ができるようになっていようと、起き抜けの妹に四の字型目を食らわせてくるのは変わってないし。


あたしはたぶん、悔しかったのだ。

あのクソ兄貴があたしの知らないところでなんか成長しちゃってるのが、ちょっとばかし、悔しかっただけなのだ。

それがイライラの原因だったことは、もうわかっている。


それがわかったから、今のあたしは泣かないのだ。

あの頃は泣いたけど、今のあたしは泣かないのだ。


わけもわからず泣きたくなる時はあるけど、泉の前で泣くのは、16歳になったあたしのポリシーに反する。

というわけで。


「……一番高いメニュー頼んでやる。」


ぼそっとそうつぶやきながら、あたしはファミレスへと入って行く。

そんなあたしの後ろから、


「はあー…これだからミヤコはさー」


とかなんとか言っている泉にはバレないように、ちょっと笑う。


泉は覚えてなくてもいい。

あたしにとって、ちょっといい思い出だったなって、それだけの話だ。