消えろ消えろと思わず浮かんだ言葉を消去する。
軽く頭を振っているあたしの手、春人の額に乗せている方の手が、熱い両手に包み込まれた。
やっぱり、華奢だろうがなんだろうが、春人はあたしより手が大きい。
その手は、あたしの手を額から頬へ持って行く。
紅潮している頬も、額と同じように熱を持っていた。
「……キョウちゃんせんぱいの手…」
「あたしの手」
「…冷たくて、気持ちいいです…」
「冷えピタ代わりかよ」
あたしは冷え性なのかなんなのか、手がなかなか温まらない人だ。
未来とかに『態度も冷たければ手も冷たいなんて救いようがないよ』と言われる。
別に救ってほしいとか思ってないけど。
でもそんなに冷たい冷たい言われると気にしないなんてこともできない。
そう、思っていたあたしに、
「……手が冷たい人は、心があったかいんですよ」
なんていう、春人の声が届いた。
思わず見ると、春人はあたしを見上げて微笑んでいた。
若干ムカついたので、投げやりに言ってやる。
「……なにその下手なフォロー」
ちょっとうれしかったじゃないか。


