「うわあああん」と泣きじゃくりながら抱き着く春人に、今度はノアがどういう状況なのか理解できてないようだった。
ノアが初めて「!?」ってなってるところを見たぞあたしは。
そんなこととは知らない春人犬(犬にしか見えない)は、号泣しながら涙声で言う。
「よがっだぁああ~!ノアがぞうおぼっででくでてよがっだぁああ~!」
「……ハル、くるし…」
「おれ、おれもう今、死のうがどおぼっでだぁああ~!」
「……いやそれ、今度は俺が困るから。(未完成アンドロイドなので)」
「よがっだぁああ~ホントによがっだよぉお~!」
「……う、うん…」
「ノアぁあ~おれちゃんと、ちゃんとノアのこと家族だからね、だいすきだからねぇえ~!」
「…………ん。」
小さくうなずいたノアは、おずおずと、自分のコピー元の頭を2度撫でた。
涙声な上に日本語が崩壊してるけど、バカ正直な春人の気持ちはちゃんとノアにも届いたらしい。
あたしは思わずあぐらをかいた上で笑ってしまった。
それをノアに見つかって、ムスッとされてしまった。
やっぱり今日は、誰か彼かにムスッとした表情を向けられる日らしい。
まあいいか、そんな日も悪くないでしょ。
帰り際、ノアはあたしに小さな声でとある質問を投げかけた。
『この辺がさ、あったかいんだけど、なんていうのこれ。』
そう言って自分の胸のあたりを指さしたノアが、あたしはちょっといとしかった。
でも答えを教えてあげなかったのは、ノア自身に答えを見つけて欲しかったから。
ノア、それきっと、“うれしい”って、言うんだと思うよ。


