「……そういう風に、作られてんの、俺。」
諦めた、そういう声色でノアは言った。
「…桜井家には春人本人が居る。だからなりきっちゃいけない。本当の家族を壊さないように…そういう風に、俺はできてんの。」
「……え」
春人が目を見張る様子が、後ろ姿からでも見て取れた。
あたしも驚いた。
だってそんな話聞いてない。
ノアは苦いものを噛むような感覚で話を続ける。
「…だからって、ハルが苦しむ必要なんてない。悩む必要もないから。」
「……でも、ノアが…」
「あんたはそうやって、人のことばかり考えてる。」
「……え?」
「自分のことは見えてないんだろ、どうせ。」
「…………?」
首をかしげる春人に、ノアはちょっとむくれたように言う。
「言っとくけど、俺は寂しいなんて思ったことない。」
「…………っ」
「ひとりぼっちとか、思ったことも、感じたこともない。」
「……そうなの…?」
「あんたが居るから。」
そのアンドロイドの表情は、バカみたいに“人間”だった。
「……――ハルがそうやって、俺のこと家族だって、思ってくれてるから。」
そう、ノアが言い終るが早いか、春人はノアに飛びついていた。


