あたふたあわあわしている春人を見下ろし、ノアは唇を噛む。
言おうかどうしようか、迷っている表情だった。
ここに来ても絶賛ヘタレロイドなのかお前ってヤツは。
というあたしの意思が伝わったわけではないだろうが、ノアは唇を噛むのをやめて、口を開いた。
「……あんたさ、なんでそんなこと言うの。」
ノアの声に、春人が「…へ?」と顔を上げる。
ノアはいまだにしかめっ面だ。
でもそれが気恥ずかしいのを隠すためだということ、あたしには隠せてないんだぜ。
「…だから、友達とか、親友とか、兄弟とか、家族とか、そういうの。」
「だっ、だってホントだし!」
「それでもっ」
ノアが初めて、声を荒げた。
ほんの少しだけど。
「…それでも、言うな。」
「なんで!」
「混乱するから!」
「…………ふぇ?」
間抜けな春人の声に、ノアがハッとしたように目を逸らした。
そのまま視線が床へと向かう。
「……こんらんする?」春人が問う。
「…………。」ノアはしかめっ面を若干、苦いものに変えた。


