「あー…せやな、まあ簡単に言うとアレや」
弥生さんは苦笑を微笑みに変えて、瞼を閉じる。
「……アンタ、今生きてるやん」
あたしの隣で、春人が息を呑むのが分かった。
「ウチはもう、ウチしかおらん。けどノアクンは、アンタがおんねん」
「…………」
「それが悪いとか、そういうことちゃうで。ただ、完全に家族の一員になってしまうのが、怖いだけなんとちゃうんかなあって、思ただけやねん」
「…………」
「……ま、ウチの憶測や。本音は、本人に聞いたらええ」
それだけ言い残して、弥生さんは立ち上がる。
未来が「ちょっとお姉ちゃんどこ行くの?」と尋ねると、弥生さんは「タバコ吸いにー」と答えてリビングを出て行った。
完全に、家族の一員になってしまうのが怖いだけ。
ノアにその感情があるのかはわからない。
ただ、本当の家族が…自分のコピー元が居る家族の中に、いきなり放り込まれたノアのことを考えると、少しキツイのかなとも思った。
桜井家の両親はノアをきちんと受け入れている。それは知ってるし、あたしにもわかる。
でもやっぱり、身代わりである自分が家族としてあの家に住むことに、ノアは抵抗があったのかもしれない。
そういえばノアは、自分の気持ちを話さないから、全然そんなこと、考えたことなかったなーとか。
ノアにその感情があるのかは、わからないけど。
あたしの隣で、ティッシュの箱をきゅっと握り締める、春人が居た。


