リビングのドアを開けてさっさと中に入って行ってしまう未来さんの後に続いて、あたしと春人もリビングへと入る。
入った瞬間鼻をつまんだ。
焦げ臭い。すげぇ焦げ臭い。
焼却炉の目の前に縛り立てられてるくらいの勢いで焦げ臭い。
リビングの出入り口で突っ立ったまま鼻をつまんでいるあたし、その隣でグッと堪えている春人クン。健気だ……。
「あ、なんやキョウちゃんやったんかー」
そんなあたし等の前に、キッチンからひょっこり現れたのは弥生さん。
何故かフライパンとスポンジを手に持っている。
どうやら焦げたフライパンを洗っているようだ。きっともうそれは落ちない。
「お邪魔します。」
「はいよー。っちゅーかごめんなあ、今めっちゃ匂うやろこの部屋ーって鼻つまんどるしな」
「すんません。」
「ええよええよ、ウチも臭いと思うし。えーっと、ほんでその、隣の子ォはこの間の子やねんな?」
弥生さんが指さしているのはもちろんあたしの隣に居る春人で、しかし春人は「…この間…?」という状況。
そういえばこの間弥生さんに会ったのはノアの方だった。
「あー、えーっと…」
「っちゅーかアンタなんでティッシュ持ってんねん。風邪か?風邪なんか?別にウチのティッシュつこうてもええねんで?」
「あー、これはえーっと……」
順序立てて説明するのが果てしなくめんどくさいかなって。


