余裕で10回は連打したと思われるインターホンだったのだけれど。
「……出ない。」
誰も出て来ない。
まさか誰も居ないんだろうか。
砂漠の中を歩き回ってそろそろ息絶えようとしていたところに見えてきたオアシスに最後の力を振り絞って走って行ったらオアシスは蜃気楼だった的な死亡フラグ。
やっぱり電話してから来るべきだったかと後悔していたところ、
「……やく出てよね!」
「なんでウチが出らなあかんのやテメェが出ろ!!」
「あたしはお姉ちゃんの無残な料理の後片付けしてあげてんでしょ!!」
「無残てなんやねんキサマ昼飯作らせといてええ度胸してんなホンマ喧嘩売ってんのか!!」
「ちょっとは料理できるようなスキルインプットしたらどうなのよ!!」
「それ弥生ちゃうやないかド阿呆!!」
「それもそうだわ!!」
「っちゅーかさっさと出らんかいッ!お客さん待たせてやかましいねんテメェはッ!!」
「じゃああの無残な丸焦げチャーハンどうにかしてよねッ!!」
ガチャッ!
勢いよく開いた玄関の向こうから、ムスッとした顔をした未来さんが現れた。
なんだろうか、今日のあたしはムスッとした顔を向けられる運命にあるんだろうか。イヤだなそんな残念な運命。今更か。
未来さんは玄関先に突っ立つあたしと春人を認めると、パチクリと瞬きをした。
「なんだキョウちゃんじゃない。焦って出て損したわ」
「オアシスが蜃気楼だった死亡フラグよりヒドイ扱い受けそうで怖い。」


