そういえば今日は休日だから泉も居るんだった。忘れてた。くっそくっそ。
あたしはソファの背もたれに背を預け、リビングの入り口に立っている泉へと顔を向ける。
「いやあたしが泣かせたんじゃないですし。」
「えーじゃあなんで泣いてんだよー」
「それは…………」
理由が言えない。ちくせう。
「ほらーほーらー。やっぱミヤコが泣かせちゃってんじゃーん」
「違ぇよやめろこっちくんな。」
「珍しく春人クンの怒鳴り声が聞こえてきたから何かと思えばさーウチの妹がごめんねー春人クーン」
「だからあたしは何もしてねぇっつてんだろやめろ触んな消え失せろ。」
いつもの癇に障る表情でソファの後ろからあたしの頬をツンツンしてくるクソ兄貴に裏鉄拳を喰らわせる。
言わずもがな避けられたわけだが。
っていうか春人も春人でなんか弁解しろよと思って視線を向けると、ヤツは自分の涙と鼻水でふがふがしていたのでなんかごめんって感じだった。
あたしは頬杖をやめて泉の手を払いのけると、そのまま立ち上がってリビングの出入り口へと向かう。
「春人、ちょっと出かけよう。」
「……ふぇ、ちょ、ちょっろ待っれくらはい…ずごごっ」
「……うん、その箱ティッシュ持ってきていいから。」
「あ、ありやろうございばず……ずびびっ」
「えーなんだよミヤコー俺が来た途端どっか行くとかお兄ちゃんちょーっと切ないかなーみたいなー」
「ほざけ。」
箱ティッシュを抱えてわたわたとこちらへやってくる春人を見届けて、あたしはリビングを出た。


