「……――“家族じゃない”とか言われて、怒らないわけないじゃないですかッ!!」
ガバッと顔を上げた春人は、泣きながらそう怒鳴った。
……いやお前それさっき一言も言ってなかったぞ。
というツッコミは引っ込めて。
「……うん、まあ、それはたしかに、怒るね。」
「怒りますよねッ、怒りますよねッ!?よかったぁ~キョウちゃん先輩ならわかってくれると思ってたんです~ずずっ」
「号泣じゃねぇか。」
「うっうっ……だって……ずごっ」
「……まあまあティッシュどうぞ。」
「ありがとござます……ずびーっ」
箱ティッシュを差し出すと、箱ごと受け取って鼻をかむ春人。
どれだけ怒ったとしても最後はこれだからやっぱり春人は春人だなと納得してしまう今日この頃。
そんな春人を横目に、あたしは頬杖をついたまま向こうの方を見てまたため息。
……ったく、ノアのバカはまたそんなくだらないことを言いやがったのかと。
それはたしかにあたしでも怒る。っていうか、怒らないわけない。
もう数ヶ月は一緒に住んでる春人に向かって、ノアはまたなんでそんなこと言ったんだろうか。
という事情を聞くことにした。
のだけれど。
「あれーミヤコなに春人クン泣かせてんのー?」
……うざいヤツが登場してきたので不可能になった。


