「……んで本題に戻るけども。ノアとどんな喧嘩したんだい。」
あたしがあぐらをかいた上に頬杖をつきながら尋ねると、春人はハッとしたように顔を上げた。
「それなんですけど!」
「はいはいどうどう。」
「す、すみません……」
「…まあ、お前がそんだけ怒るような喧嘩したんだろうなっていうのは理解できる。」
「そうなんですよ!」
「で、どんな内容なんだい。」
「図書館一緒に行こうって言ったら断られたんですッ!」
そうかそうか、それはお気の毒だったな。
「帰れ。」
「えぇ!?」
人差し指を伸ばした右腕をスチャッと玄関の方向へと向けて言い捨てるあたし。
対照的に春人は信じられないというような表情である。
「なんでそうなるんですか!俺本気で怒ってるんですよ!?」
「いやどこに怒る要素があるのかまったくもって理解できないんだが。」
「キョウちゃん先輩ならわかってくれると思ってました!!」
「いや、わかんない。」
手刀を切ってそう言うと、春人はプルプルと震えだした。すげぇ怒ってる。コイツすげぇ怒ってるよ。
膝の上に置いた手を思いっ切り握り締めている。爪が食い込むんじゃないかと思うくらい。
そのままうつむいて、肩を怒らせたかと思った直後。