その頭を撫でる人がいる。
やさしくやさしく、撫でる人がいる。
未来はそれが、見なくても誰だか、わかっているようだった。
「……教えて欲しかった」と、未来は言った。
「教えて欲しかった。お姉ちゃんが事故に遭った時も、動けなくなった時も、教えて欲しかった」
「…………」
「そしたらお見舞いに行った。お姉ちゃんはたぶん嫌がる。絶対に自分のそんな姿見せたくないって嫌がる。でもあたしは絶対に行く。何が何でも行く」
「…………」
「お姉ちゃんがどんな姿になってても、あたしのお姉ちゃんなんだから」
「…………」
「もしかしたら泣いてしまうかもしれない、落ち込んでしまうかもしれない。でも、こんな風に事実を知ってしまうより、ずっとずっとよかった」
「…………」
「あたしのことをもっと頼ってくれてよかったのに。あたしがいつもお姉ちゃんに助けてもらってばかりだったから、あたしにもたまには、恩返しさせてほしかったのに」
「…………」
「心配くらいさせてよ。迷惑だってかけてよ。じゃなきゃあたしは、どうやってお姉ちゃんに恩返しすればよかったの」
「…………」
「あたしになんにも言わないまま、居なくなるのはズルイ。あたしにありがとうも言わせてくれないまま、居なくなるなんてズルイ」
「…………」
「……だから許さない」
「…………」
「……――あんたが、あたしのこの願いを全部叶えてくれるまで、許さないんだから」
「…………。え」
撫でる手が止まる。同時に未来がその手を握った。


